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東京高等裁判所 昭和59年(ネ)1495号 判決

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないので棄却すべきものであると判断するものであるが、その理由は、後記一のとおり訂正、付加し、後記二、三のとおり付加するほか原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

一1 原判決二一枚目表五行目の「当事者間に争いのない被告の主張1の本件考案の出願経過」を「当事者間に争いのない事実と成立に争いのない乙第四号証によつて認められる被控訴人の主張1の本件考案の出願経過」と訂正し、同裏一行目の「斟酌すれば、」の後に「右補正をするについての控訴人の主観的意図がどうであろうとも、」を、同裏三行目の「解するほかはないのである。」の後に、「また、出願当初の考案の詳細な説明に控訴人主張の記載があつたとしても、右の解釈を左右するに足りない。」を付加する。

2 原判決二二枚目裏五ないし六行目の「当事者間に争いのない被告の主張2の本件発明の出願経過」を「当事者間に争いのない事実と成立に争いのない乙第八号証、前掲甲第四号証の一によつて認められる被控訴人の主張2の本件発明の出願経過」と訂正し、原判決二三枚目表一行目の「斟酌すれば、」の後に、「右補正をするについての控訴人の主観的意図がどうであろうとも、」を同表三行目の「解するほかはないのである。」の後に、「また、出願当初の発明の詳細な説明に控訴人主張の記載があつたとしても、右の解釈を左右するに足りない。」を付加する。

二 当審における控訴人の主張1について

1 成立に争いのない甲第二号証によれば、本件考案の願書添付図面(原判決添付実用新案公報図面)第四図は、本件考案の上面ブラシによる車体の洗浄状態を示す側面図であつて、同図に関し、考案の詳細な説明欄には、「本考案装置においては走行枠1の往動(第四図左から右)で自動車V車体の洗浄を行い、またその復動(第四図右から左)によつてその車体の乾燥を行うことができるもので、走行枠1は第四図左端位置において……上面ブラシ3を格納位置から下ろし、……走行枠1を右方向に走行させると、上面ブラシ3は支持軸2のまわりにほぼ三六〇度揺動して第四図に示すように自動車V車体の上面をブラシング洗浄することができる。」「走行枠1が右端に達したら……上面ブラシ3を第四図に示すように上方格納位置にはね上げ、……送風ノズル18から一斉に乾燥空気を噴出させた後、走行枠1を復動(第四図右から左)させる……」との記載があることが認められる。

このことからすれば、前記第四図は、左右両端に記載されたもの(走行枠が記載されている部分)を除き、自動車車体の洗浄時における揺動腕の回動状況及び上面ブラシの位置関係を自動車車体の上面部と関連させつゝ五つの場合について例示的に図示したに過ぎないものであつて、揺動腕の回動がこれらに限定されるものではなく、右揺動腕が支持軸に対してこれ以外の方向、特に真上位置をとる場合もあり得るのであり、また、自動車車体の洗浄後走行枠が同図の右端位置に達すると、揺動腕は真上位置をとることが明らかである。

2 これに対し、被控訴人製品のトツプブラシアームは、二八七度までしか回動しないものであることは当事者間に争いがない。

したがつて、被控訴人製品は、トツプブラシが上部位置に至つた場合において、トツプブラシアームが支点軸を中心として上部七三度の範囲で回動不能の領域が存するのであり、その上部各限界点においては、トツプブラシアームは一方の方向だけにしか回動できないことが明らかである。また、前記第四図中のほゞ中央部に図示されたもの(トツプブラシが最も高い位置をとつたもの)において、揺動腕が真上方向となす角度は必しも明らかではないが、被控訴人製品におけるトツプブラシアームの前記回動不能領域と対比すると、被控訴人製品のトツプブラシアームがこのような位置にまで回動できるかどうかは疑わしい。

3 そうすると、被控訴人製品は右の点において本件考案の技術的範囲に属しないことが明らかであり、当審における控訴人の主張1は採用することができない。

三 当審における控訴人の主張2について

1(一) 本件発明の特許請求の範囲における「支持軸2、2´の略真上位置をもとり得るよう」との記載は、当事者間に争いのない本件発明の特許請求の範囲の記載自体からも明らかなとおり、相当の大きさを有し、かつ揺動腕の回動に伴つて移動する上面ブラシが、支持軸よりも上部位置をとる場合もあり、その場合の支持軸との位置関係を明らかにしたものであつて、揺動腕の回転角度を規定したものではない。したがつて、控訴人が主張するように、右の記載を根拠として「揺動腕を支持軸のまわりに三六〇度自由に回動できる」との特許請求の範囲の記載を、「大要において(総じて、あるいは概略において)三六〇度自由に回動できる」との意味に解することはできない。

(二) 成立に争いのない甲第四号証の一、二、乙第一二号証によれば、本件発明の願書添付図面(原判決添付特許公報図面)第三図は、本件発明に係る装置の作用状態を示す側面図であつて、同図に関し、発明の詳細な説明欄には、「本発明において上面ブラシ6を支持した揺動腕3、3´は、上面ブラシ6が支持軸2、2´よりも上方に回動できるよう、その支持軸2、2´を中心に三六〇度自由に回動できるので、……上面ブラシ6がa位置にくると、……揺動腕3、3´が支持軸2、2´を中心に時計方向に揺動され、……b位置にくると……揺動腕3、3´は支持軸2、2´の中心を通る水平軸Hを越えて大きく時計方向に回動され、……C位置では上面ブラシ6は前記b位置とほぼ同じ状態を保ちつつ、天井面をブラツシング洗浄し、d位置からe位置にくると……揺動腕3、3´は反時計方向に大きく揺動し、……洗浄することができる。」「その際上面ブラシ6は支持軸2、2´の真上位置、すなわち揺動腕3、3´が第一回の実線状態から約一八〇度回動した位置で最も大きい上下方向の洗浄巾をとることができる。」、「そして洗浄終了後は……揺動腕3、3´を略一八〇度回転して上面ブラシ6を上方格納位置に保持させておく。」との記載があることが認められる。

このことからすれば、前記第三図のaないしeは、自動車車体の洗浄時における揺動腕の回動状況及び上面ブラシの位置関係を自動車車体の上面部と関連させつゝ、五つの場合について例示的に図示したに過ぎないものであつて、揺動腕の回動がこれらに限定されるものではなく、右揺動腕が支持軸に対してこれ以外の方向、特に真上位置をとる場合もあり得るのであり、また、洗浄後は右の位置に保持されることが明らかである。

2(一) これに対し被控訴人製品のトツプブラシアームは、二八七度までしか回動しないものであることは当事者間に争いがない。

したがつて、被控訴人製品はトツプブラシが上部位置に至つた場合において、トツプブラシアームが支点軸を中心として上部七三度の範囲で回動不能の領域が存するのであり、その上部各限界点においては、トツプブラシアームは一方の方向だけにしか回動できないことは前叙のとおりである。また、前記第三図のCにおいて、揺動腕が真上方向となす角度は必ずしも明らかではないが、被控訴人製品におけるトツプブラシアームの前記回動不能領域と対比すると、被控訴人製品のトツプブラシアームがこのような位置にまで回動できるかどうかは疑わしい。

そうすると、被控訴人製品は右の点において本件発明の技術的範囲に属しないことが明らかである。

(二) 控訴人は、被控訴人製品におけるトツプブラシアームが洗浄時最高限界位置まで上昇した場合のトツプブラシの位置と、右トツプブラシアームが真上位置をとつたと仮定した場合におけるトツプブラシの位置とでは、高さにおいてさほどの差異がないと主張する。しかし、仮にそのとおりであるとしても、被控訴人製品のトツプブラシアームが二八七度までしか回動しないため、その機能が本件発明の揺動腕と異なることは前叙のとおりであるから、右の高さにおいてさほどの差異がないことを根拠にして、被控訴人製品の構成(ホ)が本件発明の構成要件ホと同一というべきであるとすることはできない。

3 したがつて、当審における控訴人の主張2も採用することができない。

そうしてみると、控訴人の本訴請求は、失当として棄却すべきであり、これと同旨に出た原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。

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